MAIN STORY / EP-P09 / 社会人期 / 4 MIN READ

待ち合わせは二日分

社会人期土曜夕方の誤集合から日曜朝の本集合までシキ・コンフィ

土曜の夕方、シキは入場券も傘も忘れず北口へ着いた。コンフィから届いた返事は、「明日じゃない?」だった。

ILLUSTRATION LOADING土曜夕方に北口へ着いて連絡するシキ

01北口

土曜の夕方、駅の北口へ着いたシキは、コンフィに連絡した。

《着いた。改札の外》

《え、明日じゃない?》

シキは鞄を見下ろした。展示会の券が二枚、充電器、折り畳み傘。出る前に確かめたものは全部入っている。

《今日は土曜》

《うん。展示会は日曜》

《それは分かってる。今日の夕方から会う話だと思ってた》

そこまで打って、二人のチャットを上へ戻した。

《週末なら空いてる》に《日曜の展示を見る》と返したのは、シキ自身だった。続く《前でもいい》を前日のことだと思い、少し下にあった《夕方くらい》とつなげて読んでいた。そちらの夕方は、コンフィが買い物に出る時刻だった。

「なるほど」

改札から出てきた人が、シキの横を通り過ぎた。

《買い物の時間までつなげて読んだ。私はもう北口》

《いや、開場前でもいいって意味だった。そんな早い前じゃなくて》

少しして、もう一通来た。

《今近くにいるから、ご飯行こ。十五分でそっち行く》

シキは帰りの電車の時刻を見た。今帰れば、十五分後にもまだ電車の中だった。

《待つ》

19日付

ILLUSTRATION LOADING同じ短文を別の日程として読んだと気づく二人

コンフィは本当に十五分で来た。買い物袋を持つ手を上げ、シキの顔を見たところで笑った。

「前日入りだったとは思わなかったな」

「私も、そう呼ぶほどのことだとは思ってなかった」

シキは鞄から入場券を出した。明日の日付が大きく印刷されている。

「展示会が明日なのは合ってる」

「そこは疑ってないよ。じゃあ、なんで今日いるんだろうってだけで」

シキも少し笑い、券を戻した。コンフィの買い物袋を片側からのぞく。思ったよりいろいろ入っていた。

「もう買い物、終わった?」

「だいたい。あとは食べて帰るだけ」

「そこからなら合流できる」

二人で駅前の通りへ出た。ラーメン店の灯りが見えたので、まず列の長さを確かめに行くことになった。

31夕食

ILLUSTRATION LOADING誤集合を土曜の夕食へ変えるシキとコンフィ

並んでいるのは三人だけだった。

「今日の移動よりは短く済みそうだね」

コンフィが最後尾につき、入口のメニューを見上げた。

「その比較、私が悪いみたいになるんだけど」

「誰が悪いかは保留。文章が悪い」

「文章を書いたの、二人だよ」

コンフィはメニューを見るふりをした。シキが隣で笑うと、結局こちらも笑ってしまった。

カウンターへ案内され、二人は別の味を頼んだ。待つ間に、コンフィが買い物袋から小さな焼き菓子の包みを二つ出した。

「これ、明日の待ち時間にと思って買ったんだ。片方どうぞ」

シキは受け取り、開け口へ指を掛けたところで止まった。

「明日の分だった」

「食べてもいいけど、明日また待つよ」

シキは少し考え、入場券と同じところへしまった。

ラーメンの湯気が上がると、コンフィはさっそく一口すすった。熱かったらしく、顔を上げて短く息を吸う。シキが水を寄せてやると、片手を上げて礼をし、また麺を持ち上げた。

今度は少し冷ましていた。

シキも箸を割った。明日どの展示から見るかは、食べ終わるまで話に出なかった。

48二度目の約束

駅へ戻る途中で、シキはスマートフォンを出した。

「明日は十時。北口。今日は解散」

「おけ。今度こそ明日」

「日付は日曜」

「そこまで言う?」

「言う」

二人のチャットにも、日曜の十時と送っておいた。コンフィが隣でそれを読み、丸の反応をつけた。

改札を抜けて別々のホームへ向かう。コンフィは階段の途中で振り返り、もう一度手を上げた。

日曜の九時五十五分、コンフィは昨日と同じ案内板の前にいた。

ILLUSTRATION LOADING翌朝、北口で紙カップを一つずつ持つシキとコンフィ

紙カップを二つ持ち、シキが来ると片方を差し出した。もう片方の手がふさがったままなので、時計は口で伝えてくる。

「日曜、九時五十五分。北口」

「たしかに。今日は全部合ってる」

「昨日の分、五分早くした」

「一日ずれは五分で相殺できないよ」

そう言いながら、シキは温かいカップを受け取った。

64会場へ

会場まで歩く間に、コンフィが展示の案内を開いた。昨日ラーメンを待っている間に見ればよかったものだった。最初に見たい二つだけ決め、あとは中で考えることにした。

着くと、入口にはもう列ができていた。飲み終えたカップを捨て、二人で最後尾へ並ぶ。

シキが入場券を取り出した時、焼き菓子も一緒についてきた。今度はそのまま、開け口をつまんだ。

隣でも、同じ包みを開ける音がした。

了