MAIN STORY / EP-P13 / 移行期 / 4 MIN READ

名前より先に用途が変わる

移行期最初のカード募集から目的のない通話まで約一週間トリネ・シキ・コンフィ・アオイ

射撃ゲームのために作った古い部屋へ、カードゲームの募集が来た。シキが名前を今の用途に合わせると、翌日には別の相談が始まる。

ILLUSTRATION LOADING古いゲーム用の部屋へ新しい募集を送るアオイ

01古い部屋

春の夕食時、シキの画面に「夜間潜入班」から通知が来た。

そんな名前にしたのだった、と思い出す。以前、四人で協力型の射撃ゲームを遊ぶために作ったチャットだった。説明欄には今も「四人推奨・通話必須」とある。最後に潜入した日を思い出す前に、アオイの投稿が見えた。

《ミラモン、一戦だけできる?》

シキはスプーンを置いた。

《できる。二十二時までなら》

《その部屋まだあったんだ》

コンフィが返し、帰りの電車にいるトリネも、結果だけなら見ると送ってきた。

《上にあったから》

アオイが言う。シキの画面では、ずっと下に埋もれていた部屋が一番上へ来ていた。

11一度目

ILLUSTRATION LOADING用途に合わせて部屋の名前を変更する四人

通話へ入る時、シキは射撃ゲームを開きかけた。

「違った。ミラモンだったね」

「こっちはもう待ってる」

アオイの声を聞き、開きかけたものを閉じる。コンフィも通話へ入り、二人の対戦を見始めた。

一戦終えて、トリネへ結果を送る。そのついでにシキは部屋の設定を開いた。

[部屋名が「ミラモン構築室」に変更されました]

「名前も合わせておいた」

「構築してない」

アオイが言った。

「さっき二枚替えてたよね」

「戻した」

シキは設定を閉じずに待ったが、アオイはそれきり何も言わなかった。チャットではトリネが《開始三分で用途終了してるじゃん》と笑っていた。

「ミラモンは合ってる。そこ残そ」

コンフィが助けてくれたので、最後の三文字を直した。

[部屋名が「ミラモン対戦室」に変更されました]

シキはようやくスプーンを取り、冷めかけた夕食を食べ始めた。

28翌日の募集

ILLUSTRATION LOADING食事と菓子の店の写真を示すコンフィと、別々の部屋の三人

翌日の「ミラモン対戦室」には、コンフィから店の地図が二枚届いた。

《今夜十分だけ通話できる? 土曜どっち行くか決めたい》

シキが通話を開くと、コンフィがすぐに入り、トリネも帰宅してから加わった。アオイは音声を切ったまま、店の写真に反応だけをつけていた。

「こっちなら駅から近い。もう一軒は歩くけど、甘いものが多い」

コンフィが写真を切り替える。

「じゃあ近い方にして、甘いのは食後でいいんじゃない?」

トリネが言うと、コンフィは二枚とも残した。

「そうだね。二軒行くことにしよ」

「いや、食べてから考える。まだ一軒」

コンフィが二枚目へ書きかけた時刻を消す。シキも頷いてから、部屋の設定を開いた。

[部屋名が「予定相談室」に変更されました]

通話がまだ切れないうちに、トリネが投稿した。

《明日の夜、協力ゲームやる人》

「もうちょっと待ってほしかった」

シキは名前の入力欄を見たまま言った。

「明日の夜まで?」

「名前変えたとこだったから」

「予定の相談ではあるじゃん」

それなら合っている気もした。シキはいったん設定を閉じた。

48候補

ILLUSTRATION LOADING用途を表す短い部屋名の候補を考える四人

その後は、ゲームの募集も買うか迷っている物の写真も、同じ部屋に来るようになった。

部屋名はもう見られていないのかもしれない。それでも、変え始めたシキだけは気になった。最初の「夜間潜入班」で済んでいた頃へ戻すのも、なんだか悔しかった。

《もう名前変えたくない。全部できる名前にしたい》

トリネから《総合窓口》と来た。

《役所》

アオイが返す。

《遊ぶ前から受付で疲れそうなんだけど》

コンフィの一行を見て、シキは打ちかけた「共用室」を消した。「集合場所」も入れてみたが、何か決めてから集まる場所のような気がした。

アオイから、もう一語届く。

《ロビー》

《来てから決めるとこ》

シキは入力欄を空にした。そこへ三文字だけ打って、四人へ送る。

[部屋名が「ロビー」に変更されました]

コンフィが丸の反応をつけ、トリネもその丸を押した。

63接続中

ILLUSTRATION LOADING接続中へ改名した部屋に生活音だけを残す四人

その夜、遅い夕食を机へ運ぶと、アオイから《いる人》と来ていた。

シキが通話を開いた時には、コンフィがもういた。トリネも数分後に加わったが、誰からもゲームの画面や店の地図は出てこなかった。

「で、今日は何する?」

シキが聞くと、アオイは少し考えた。

「べつに。人いるかなあって」

「いるけど。四人」

トリネの声に、アオイが短く笑った。そのまま菓子の袋を開ける音がしたので、シキもスープを一口飲んだ。

「アオイ、それ何味?」

コンフィが聞く。

「白いやつ」

「色しか分からないじゃん」

トリネに言われ、袋がまた鳴った。アオイは食べて確かめているらしかった。

「味も白っぽい」

「情報が減ったね」

シキは笑い、脇に残っていた設定画面を閉じた。コンフィの湯が沸き、トリネの椅子が鳴る。誰かが話すまで、スープを飲んでいてもよかった。

了