実験を終えて研究棟の廊下へ出ると、窓の外がまだずいぶん明るかった。
修士課程も終わりが見えてきた頃だった。コンフィは白衣を鞄へ押し込み、ノートをその上へ載せた。畳み直すのは後でいい。歩きながら四人のチャットを開く。
《今日、珍しく午後空いた。どうする》
シキからすぐに返事が来た。
《午後休。次の用事まで一時間半くらいある》
続いてトリネが《私も半休。今会社出た》と送ってくる。コンフィが《まじか》と打っている間に、アオイも現れた。
《授業ない。とてもひま》
《全員いるじゃん》
建物の出口で立ち止まり、いったん開いた鞄を閉めた。
*

《駅前で何かする?》
コンフィが送ると、アオイから《どの駅前》と来た。
シキは用事の合間に寄った街にいて、トリネは会社の最寄り駅へ歩いていた。アオイの大学もコンフィの大学も、その近くではなかった。
《カードある人》
誰もなかった。コンフィも鞄を見たが、ついさっき自分で入れたノートと白衣しか見えない。
《四人いるのに、一組もない》
《人数だけあるねえ》
アオイの返事を読んで、コンフィは乗換案内を開いた。
《お茶なら手ぶらでできる。そっち行くとどれくらいだろ》
*

シキのいる駅を入れると、到着まで一時間以上かかった。
途中の駅で調べ直せば、少しは早くなる。ただ、アオイが着く頃にはシキが次の用事へ出なければならなかった。コンフィは乗換を一つ減らし、もう一度時刻を見る。
《ここなら、十分くらい四人いる》
《改札で飲む?》
トリネの返事に、コンフィは声を出して笑った。三人へ紙カップを渡し終えた途端、シキがそれを持ってまた電車へ乗っていく。浮かんだ光景が忙しすぎた。
《お茶より移動が長すぎるか。今日は帰る》
《夜ならオンラインいける》
アオイの一行に、コンフィも返事をした。
駅へ向かう途中、建物の脇の休憩スペースが目に入った。四人掛けの机が空いていて、椅子が一つだけ引かれていた。
こんな近くに座れる場所はあるのに、と思ってから、コンフィは通り過ぎた。電車へ乗ってようやく、何か飲みたいと思っていたことを思い出した。
*
夜、トリネから一行届いた。
《一戦だけ。いる人》

コンフィが接続すると、もうアオイの声がした。シキもすぐに入ってきた。昼に送られてきた四つの駅名を思い出す間もなく、いつもの声が揃った。
「結局、お茶飲んだ?」
コンフィが聞くと、シキは「今飲んでる」と答えた。カップを置く音がする。
「私も。昼から同じやつ」
アオイの方からは、ペットボトルのつぶれる音がした。
コンフィは自分の机を見た。本とマウスしかない。
「あ、待って。私も取ってくる」
立ちかけたところで、トリネに呼ばれた。
「あとコンフィだけ。始められる?」
画面には三人の準備完了が点いていた。コンフィは椅子へ座り直す。
「始める。一戦終わったら取ってくる」
自分の名前の横も点いたので、今度はそちらを見ることにした。

