MAIN STORY / EP-P27 / 大学期後半 / 6 MIN READ

集まってから決めます

大学期午後の早着から四人集合後の待機継続までトリネ・シキ・コンフィ・アオイ

四人が決めたのは、午後に駅前で会うことだけ。先に着いたトリネへ、洗濯物と朝ごはんの進捗が届く。

ILLUSTRATION LOADING駅ビルの四人掛けへ一人で早く着き本を開くトリネ

大学四年の夏休み、四人は午後に駅前で会うことだけ決めていた。

トリネはかなり早く着いた。駅ビル三階の休憩スペースは涼しく、窓際の四人掛けも空いていた。ここで待てるなら悪くない。鞄から厚い本とノートを出す。

《着いた。何するの》

シキから最初の返事が来た。

《洗濯物干したら向かう》

《干すじゃない。取り込んだら》

コンフィは《今起きた》と送ってきた。アオイからは持ち物を聞かれたので、まだ何をするか決まっていないと返す。

《じゃあ何も持たない》

トリネはスマートフォンを本の横へ置いた。ほかの三席は空いたままだった。

*

ILLUSTRATION LOADING四人チャットで準備だけが進み到着後の予定は決まらない場面

コンフィの支度は、通知が来るたびに一つずつ進んだ。

《食べたら出る》

しばらくして、《着替え終わった。夕方前には行く》が来た。トリネは本へ指を挟んで、窓の外を見る。まだ明るい。夕方までには、かなりあった。

三分後に訂正が届いた。

《行くじゃない。着く》

トリネは《まだ家?》まで打って消した。さっき着替え終わったところなのは、もう知っている。

続いてシキから、洗濯物を取り込んだという報告が来た。

本の問題は一つ解けた。もう一つ始めようとノートを広げ、隣の席へ鞄を移しかける。やめて自分の足元へ置いた。

*

ILLUSTRATION LOADING目的未定の待ち時間に机へ伏せて眠るアオイ

最初に現れたのはアオイだった。

スマートフォンだけを手に、向かいの椅子へ座った。本当に鞄もない。

「そこまで何も持ってこないとは思わなかった」

トリネが言うと、アオイは机の本をのぞいた。

「勉強するの?」

「待つ間だけ」

図の横には式が続いていた。アオイは少し読んでから体を戻し、腕を机へ重ねた。

「何するか決まったら起こして」

しばらくはトリネがページをめくるたびに目を開けていたが、そのうち開けなくなった。

*

ILLUSTRATION LOADING眠るアオイの前の紙袋へ揚げ菓子を一本置くコンフィ

コンフィは駅へ着いてから、もう一度だけ連絡してきた。

《近い。店だけ見てから行く》

見ただけでは済まなかったらしい。現れたコンフィの手には紙袋があり、中から細い揚げ菓子を詰めたカップが出てきた。

「食べてから来たんじゃなかった?」

「あれ朝ごはん。これは、まあ、おやつかな」

「もう夕方だけど」

「いや、起きた後の一食目っていう意味で。昼ではなかった」

コンフィは紙袋を広げ、アオイの前へ一本置いた。自分も一本抜いてから、トリネの本をのぞく。

「何することになった?」

「まだ」

「そっか。ここ涼しいね」

椅子を引き、トリネにもカップを寄せた。

*

ILLUSTRATION LOADING洗濯ばさみの音で起きたアオイが紙袋の上の菓子へ手を伸ばす

最後にシキが来た。

片手の飲み物を置き、薄い鞄を椅子の背へ掛けようとしたところで、机に小さな音がした。持ち手に残っていた洗濯ばさみが転がった。

アオイが顔を上げた。

「決まった?」

「集まった」

シキは洗濯ばさみを拾い、一度自分の鞄を見た。もう何もついていないのを確かめ、今度こそ掛ける。

「じゃあ、決める?」

コンフィに言われ、トリネは顔を上げかけた。あと一行で今の問題が終わる。そこだけ先に書くことにした。

ボトルの蓋が開いた。アオイは目の前の揚げ菓子を取り、起きてすぐなのにもう食べていた。

最初の《何するの》には全員の既読がついていた。

答えは、まだ誰も送っていなかった。

了