MAIN STORY / EP-P34 / 高校卒業後〜大学入学前 / 6 MIN READ

閉店後も募集します

高校期閉店日の朝の相談から、日付変更後のオンライン対戦までトリネ・シキ・コンフィ・アオイ

高校を卒業した春休み、四人が月環演武を始めたゲームセンター・ミツバが閉店する。最後の日の集合時刻は、シキの誤字でなかなか伝わらない。

ILLUSTRATION LOADING四つの場所から閉店日の集合時刻を決めようとする四人

《みんな、何時くらいにミツバ?》

卒業式が終わり、進学先へ通い始めるまでの春休み。アオイは四人のチャットへ送ってから、財布に硬貨があるか確かめた。

ミツバは学校の近くにあるゲームセンターだった。受験勉強の息抜きに入った四人が、『月環演武』を始めた店でもある。古い対戦台は、硬貨一枚で二回遊べる。

そのミツバが、今日で閉まる。

《一時にな》

シキから返事が来た。

《さ》

《は》

《誤字ひど》

アオイが送ると、今度は《飯はどうする?》と来た。一時の後ろは直らないまま、昼食の話になった。

そこへコンフィが《行けなくなった》と挟む。

《まじか》

アオイは時計を見て、ひとまず自分の出る支度を始めた。誰が何時にいるかは、着けば分かるだろう。

*

ILLUSTRATION LOADING閉店日の古い対戦台で強い相手へ挑むシキ

午後、シキがミツバへ着いた時には、奥の対戦台に人が集まっていた。

空いた席へ滑り込む。少し暗い四角い画面と、使い込まれた球形のレバー。手を置くと、細かな傷のあるところへ親指が当たった。

相手は強かった。負けて席を替わり、後ろで一戦見てから、もう一度座った。さっき見た攻めは覚えたはずなのに、いざ自分へ来ると間に合わなかった。

席を立つ理由だけは、相手がきれいに作ってくれた。

《ガチな人に負けまくった》

店の端で送ると、コンフィから返事が来た。

《最後の日に何してるの》

《最後だから確認した。勝てないこと》

シキは財布をしまい、出口まで歩いた。振り返ると、さっきの席にはもう次の人が座っていた。少し背伸びして、その人の最初の動きだけ見ていった。

*

ILLUSTRATION LOADING混んだゲームセンターで、使わなかった硬貨を持つアオイ

アオイは昼に一度店を離れ、夕方に戻ってきた。

十人ほどに増えた客の肩越しに、対戦台が見えた。座っているのは、紫がかった長い髪の人だった。二戦見ても席を立たない。昼にいたシキの姿は、もうなかった。

《戻ってきたら十人くらいになってる。紫っぽい長い髪の人が強い》

《めちゃ行きたい》

シキはもう別の場所にいるらしい。アオイは列の後ろへ立ち、ポケットの硬貨をつまんだ。

この順番が来たら、あの人と一回。画面の中で大きく体力が減った。自分が座っても、あまり違うことにはならなそうだった。

《出る幕ないな》

硬貨を離し、列から抜ける。

《家でトレモが安定そう》

外へ出ると、まだ看板に明かりがついていた。アオイは上着のポケットへ手を戻した。握っていた硬貨だけが、少し温かかった。

*

ILLUSTRATION LOADING閉店写真の下へシキの短い募集とトリネの即答が届く

日付が変わってから、アオイはミツバの写真を眺めていた。

昼の対戦台。壁際の古い椅子。最後まで残った人が撮った、シャッターの下りた入口。

さっき自分が出た時には、まだ開いていた。写真を一枚戻して、もう一度進めた。

《ミツバの写真見てたら、急に寂しくなってきた》

《なんかつらい》

しばらくして、コンフィが返した。

《そのままやめる人もいそう》

《全然行ってなかったけど、寂しいもんだね》

シキの返事の下には、少しの間、何も増えなかった。

アオイがまた写真へ戻りかけたところで、同じ名前から一行届いた。

《募集》

トリネの返事は早かった。

《いる》

*

ILLUSTRATION LOADING閉店後の自室でオンライン対戦のもう一本を始めるシキとトリネ

二人はそれぞれの部屋で『月環演武』を起動した。

部屋を作ったシキが、対戦前の画面から動かなくなった。

《ボタン反応しない》

《設定では》

《消えてた。ちょっと待って》

トリネが練習画面で同じ技を出している間に、シキの接続が一度切れ、戻ってきた。

今度は動いた。一戦目は負けたが、シキは席を立たず、すぐに次を押した。さっき通らなかった攻めをもう一度試すと、今度は少しだけ当たった。

何戦目かの結果画面で、シキが送った。

《次ラスト》

その一戦は、トリネが取った。

《もう一本》

《ラスト終わったけど》

《勝ちたい》

《りょ》

シキは準備完了を押した。トリネの表示も、すぐに点いた。

了